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相続登記の話(2)

相続の順位


民法には、相続に関しその順位の規定があります。

第1順位:子、第2順位:親(尊属)、第3順位:兄弟姉妹 と規定されています。相続は血(今ではDNA)の流れとしてみると理解しやすいです。より近い血の人に相続権を与えています。第1順位の者がいる場合、第2順位の者には相続権が発生しません。(つまり、子があれば親には相続権は発生しません。第2順位、第3順位も同じです。)では血としては全く他人の配偶者の扱いはどうかというと、配偶者は常に相続人になると定められています。良く相続のパンプレットとかで、配偶者と子は半分ずつとか、配偶者と兄弟の場合は3対1とか記載されてますが民法の規定はそうではありません。あくまでも相続の順位付けをして、配偶者は常に相続人となり、その相続分の割合は子の場合は半分、尊属の場合は2対1、兄弟の場合は3対1と規定されています。明治の民法は「家督相続制度」でしたから、配偶者には当然にはその権利は認められていませんでした。戦後民法は配偶者に優しい規定となっています。血の流れも配偶者あってのことなので、当たり前と言えば当たり前です。

民法は規定ですので、規定とおりの相続をする場合は「遺産分割協議書」は不要です。以前知り合いの税理士から、法定相続をして申告したのに税務署から「遺産分割協議書」の提出を求められたから作製して下さいとの依頼があり、困惑したことがあります。どうも税務上の特例を受ける場合、添付書類として「遺産分割協議書」が規定されているとのことでしたが、今一つ分かってないな~と思ったものです。何でもかんでも「遺産分割協議書」が必要と思っている風潮がありますが、民法は規定です。その規定とは異なる相続をする場合にのみ、「遺産分割協議書」が必要となるのです。

 

遺産分割協議書


不動産の名義が亡くなられたお父様の場合で、妻と、長男・二男が相続人の場合、法定相続では、妻4分の2、長男4分の1・二男が4分の1となります。このとおりの相続登記をする場合、「遺産分割協議書」は不要です。この規定とは異なり、配偶者がその所有権を相続すると家族で話し合って決めた場合、「遺産分割協議書」が必要となります。「遺産分割協議書」には個人の実印(市区町村長に印鑑登録している印鑑)を押印し、印鑑証明書の添付が必要です。何故なら、法律上4分の1の権利を有している子供達の権利を侵害することとなるので、「遺産分割協議書」の真実性を担保するため、本人が保管している実印と、制度上本人しか取得できない印鑑証明書を添付させるのです。又、「遺産分割協議書」の作成をもって、「放棄」したと言う方が多くおられますが、法律上の「相続放棄」と遺産分割協議書での権利の放棄とは大きく異なりますので、注意が必要です。

「相続放棄」は、被相続人の死亡を知った時から3月以内にしなければならないと規定されています。あくまでも知った時からですので、被相続人の死亡の日からではありません。この扱いはかなり柔軟のようですが3ヶ月というのは法定ですので注意が必要です。期間を過ぎると相続放棄は出来ません。「相続放棄」は相続放棄申述書を家庭裁判所に提出しなければなりません。相続放棄申述書には被相続人の戸籍証明書等が必要となるのは相続登記を同じです。「相続放棄」をすると、その者は相続人から外れますので、一切の権利・義務がなくなります。つまり、被相続人が負担していた借金の返済も不要ですが、相続財産の金銭等も一切受け取れません。相続財産の限りで債務も承継するという「限定承認」が定められていますが、当職は扱ったことがありません。

 

遺言について


最近「遺言」をよく聞きます。聞きますが、実務者としてはかなり首をかしげることが多いです。まず、我が国では相続人は戸籍制度により明確です。民法には相続に関する規定がしっかりあります。相続財産が持ち家と現金の場合に「遺言」が必要かと言うことです。もちろん家族それぞれの事情があるでしょうが、当職は一般的な家庭では「遺言」は不要と思っております。最近の風潮で「遺言」を作成したから、遺産争続になる場合もあります。又、実務上「遺言」は遺言として尊重しつつ、ちょっと違う「遺産分割協議書」を作成するケースもあります。遺言のとおりにすると税務上の特典が受けられないとかのケースがあるからです。複数の不動産があり、株券、証券があるとか、農地、山林等があり、耕作者を保護する必要があるとかの場合は「遺言」が必要かとは思いますが、今一度、自分の家族に「遺言」が必要かどうか考える必要があると思います。実務者の間で言われる「農家の嫁問題」という話があります。父母と長男夫婦が農業を営んでおり、二男・三男は都会で会社員をしています。長男が不幸にして逆縁で早くして亡くなり、その後、不動産等の所有者である父が亡くなった場合、嫁には父の相続権がありませんので、何年も一生懸命農業を手伝ってきていても、父の相続に口を出すことは出来ません。長男夫婦に子があれば、子が父の相続権を代襲相続しますので、子の法定代理人として意見を言うことは出来ます。子がなければ、最悪家を追い出されて終わりになります。こんな場合は「遺言」が必要かと思います。あるいは嫁を養子にするとか生前の対策が必要だと考えます。

「遺言」のある相続登記の場合は揃える戸籍が少なくて済みます。被相続人の出生から死亡までの戸籍は必要ありません。被相続人の死亡が記載されている戸籍(除籍)証明書と相続を受ける相続人の戸籍証明書(相続人である証明)と住民票があれば十分です。
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